なぜ、私たちは「ペットと暮らすこと」を大切にしているのか

私たちがペットにこだわっているのは、単に私たち自身が動物好きだから、というだけではありません。
在宅医療をしていると、患者さんにとって、ペットの存在がどれほど大きなものなのかを実感する場面がたくさんあります。
入院をきっかけにせん妄を起こしてしまう方は、決して珍しくありません。
それまで普通に暮らしていた方が、入院という環境の変化によって混乱し、落ち着かなくなったり、会話がかみ合わなくなったりする。その状態を見て、そのまま施設への入所が検討されることもあります。
でも、ご家族や、せん妄に理解のあるソーシャルワーカーさんが、
「この方は家に帰ったら、きっと落ち着くと思います」「ペットに会ったら、元気になるんじゃないでしょうか」
と退院を後押ししてくださり、実際に自宅へ帰った途端、驚くほど落ち着いた。
私たちは、そんな方を何人も見てきました。
もちろん、人を支える存在はペットだけではありません。
お子さんだったり、お孫さんだったり、長年連れ添った伴侶だったり。
でも、ペットの持つ力は、ときに本当に大きいのです。
「家に帰って、あの子に会いたい」
その気持ちで、退院に向けてリハビリを頑張れる方がいます。
そして家に帰ってからも、
「この子と離れたくないから、まだ家で暮らしたい」
その思いが、その方の生活を支えていることがあります。
もちろん、安全に生活することが難しくなれば、施設への入所をおすすめすることもあります。ペットと一緒に暮らせる施設が見つかれば、私たちも喜んで応援します。
でも、長い間一緒に暮らしてきた大切なペットと離れて生活することを、私たちはとても心苦しく感じます。
住む場所が変わることは、患者さんだけでなく、ペットにとっても大きな環境の変化です。
だから、
「できるだけ長く、この家で、この子と一緒に暮らしたい」
そう願う方がいるのであれば、その生活をできるだけ長く続けられるようにお手伝いしたいと思っています。
そして、
「できれば最期まで、この家で暮らしたい」
という希望があるのなら、それもできる限り応援したい。
在宅医療では、医師や看護師、介護職だけが患者さんを支えているわけではありません。
毎日そばにいてくれる犬や猫たちが、患者さんを安心させ、笑顔にし、ときには「もう一度家に帰りたい」「まだここで暮らしたい」という力を与えてくれています。
考えてみれば、ペットたちは毎日、無償で、とても大きな仕事をしてくれています。
患者さんがその人らしく自宅で暮らしていくために、ペットたちは本当に大きな貢献をしてくれている。
だから私たちは、在宅で暮らす患者さんにとってのペットの存在を、とても尊いものだと思っています。この子たちの存在は、どんな医療や薬も敵いません。



