なぜ、私たちは“在宅”にこだわるのか。

家族や、大切なペットと一緒に過ごせるから。
それも、もちろん大切な理由です。
それだけではありません。独居の方もたくさんいらっしゃいます。
その人が長く暮らしてきた家。いつもの部屋、いつもの椅子。使い慣れた家具や食器。窓から見える景色。聞き慣れた生活の音。
そこにある一つひとつが、その人の人生の一部です。
そして、住み慣れた環境には「思い出」だけではない役割があります。
自宅では、考えなくてもトイレの場所がわかる。いつもの動線で台所へ行く。自分でカーテンを開ける。必要なものを自分で取りに行く。
こうした何気ない日常の動作そのものが、毎日の運動であり、認知機能への刺激でもあります。
ところが環境が大きく変わると、それまで無意識にできていた行動が難しくなることがあります。
「ここはどこだろう」「トイレはどこだろう」「これは自分のものだろうか」
慣れない環境では自分で動く機会が減り、周囲にしてもらうことが増えることもあります。
活動量が減れば筋力や身体機能が低下し、ADLの低下につながる。さらに、見慣れた景色や物、音、毎日の習慣といった「自分が自分でいるための手がかり」が減ることで、見当識や認知機能にも影響することがあります。
だから、「どこで暮らすか」は、単なる住所の問題ではありません。
家族と暮らしている人も、一人で暮らしている人も同じです。
その人の家や部屋、物、景色、音、そして毎日の習慣。そのすべてが、その人の人生であり、その人らしさを支える環境です。
病気になっても、年齢を重ねても、できる限りその人の「暮らし」を失わずに医療を届けたい。
だから私たちは、在宅医療にこだわっています。
※施設での生活を否定しているわけではなく、在宅にこだわる理由を記載しております。施設もその人を守るためにとても重要な役割を担っております。その理由に関してはまた次回の記事でご紹介します。


